コラム せとうち

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抜粋記事

 高松信用金庫理事長伊賀三千廣氏の決断も見事だったが、さぬき信用金庫理事長高橋清氏の判断も立派なものだった。
 未曾有の厳しい状況下にある金融経済情勢を正確に分析したのち、両者の意見が一致し秘密裡に話し合いが進み、記者会見においての正式発表に漕ぎつけたわけである。この潜行協議が一切マスコミに洩れずシークレットを守り通したことが、見事な対等合併という理想的な形で一件落着となったわけである。
 もし洩れて事前に報道されていたならば、おそらく周囲からの雑音も入ってご破算になっていたかもしれない。理事長と専務しか話は通じていなかった、という警戒厳重な中での話し合いが進展した。これがまず成功した第一の要因。
 次に観音寺信用金庫を加えた三金庫合併を全く考えず、さぬき信金のみの二金庫に限定したこともよかった。辻理事長のもと、唯我独尊の形で自主路線を貫こうとする観信を加えたがため、ブーイングが入りやすく"壊れかけのラジオ"と化す怖れも多分にあった。
 伊賀理事長は流石に日本銀行出身だけに頭脳明晰、相手の経営感覚を熟知していたため敢えて参加を要請しなかった。ねじれ現象を起こしては折角の話し合いも無駄になるからだ。
 そして、伊賀理事長は両金庫の体力、体質をよく考えて合併期日以前から用意周到な事前の融合策をとった。まず、さぬき信金側の不安を取り除く努力を最大限に行うとともに、野球大会などのスポーツを通じてお互いの気心を調和し合流させるなど細心の神経を払った。
 さぬき信金側の声を聞くと、やはり「非常に不安だったが高信さんがとても親切に気を遣ってくれ、仕事はやりやすくなった」と感激している女子従業員もあった。細かい作業の段取りなども異なっているが、こうした垣根は高信側のきめ細かい配慮によって越えられた。
 とにかく高信側は全員が使いすぎるほどの暖かい対応をしたことが、まず人対人の大きなハードルを越える効果をもたらした。
 資金量が大きくなるためいままで地銀に奪われていた取引先も、正当な融資が可能になったが、信金としての大原則であるリテール強化をもっと細分化して進め、魅力ある簡便かつ地域性を考慮した新商品を売り出して欲しいものだ。
 都銀はこのところリテール作戦を強化、充実しているが、地縁、人縁に恵まれた高信としては、他の追随を許さないユニークな新商品を発売することこそ、合併の大きなメリットにも理解されるのでは。
 高信側とさぬき信金側には当分消えにくい対顧客への落差があるだろうが、これを一気に是正しないで段階的にケースバイケースで丁寧に処理するよう望みたい。
 とにかく別個の金庫が一つになっても、内部で仕事をするのは人間であるため、一瀉千里にはかどることはありえない。
 ある程度の時間が必要だろう。
 しかし、いま振り返ってみると、「本当によくまとまったなあ」というのが偽らざる実感である。
 大きな流れに乗ろうと努力しているさぬき信金側の気持ちを暖かく汲み取り、将来的には「この合併を実現して良かった。成功だった」と言われるようになってもらいたい。

重くのしかかる地銀の責任

 単に2信金の対等合併という事実だけに終わらず、次なる地方の金融再編成がどのような形で進むのか、そのことを占う試金石でもある。
 広島県では、広島総合銀行とせとうち銀行の合併が決まり、すでに第2地銀段階での再編に入った。
 四国地区でこれからどんなカップルでの合併が進むのか。これから推移を注視したいが、各頭取の頭の中ではそろそろビジョンを描き初めているのではなかろうか。
 「うちは体力があるし内容もいいのでそんなことを考える必要はない」
 と合併には縁がないようなことを言う人がいたが、体力のしっかりしているうちに合併の話し合いをすすめるべきである。
 不良債権の山を抱えて預金も伸びず、自己資本比率も低調であれば、足利銀行や石川銀行の二の舞になってしまいかねない。
 月刊「金融ビジネス」2月号の「銀行・証券ランキング」によれば、われらが香川の百十四銀行が32位、香川銀行は36位である。
 全128行の中ではまず上位のクラスにあるので安堵したが、先に合併の決まっている広島総合銀行は125位、せとうち銀行は105位となっている。
 低位行同士の合併では実効が上がらないばかりか、一つ運転を誤ると空中分解する危険すら孕んでいる。
 地方銀行は合併によって体力を強化し、勝ち残って地域の取引先を守り維持していく責任があることを、絶対に忘れてはならない。(編集長 中西 稔)

   
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