コラム せとうち

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抜粋記事

おそらくその当時は青色発光ダイオード(LED)の研究と言ってもピンと来ない。日亜化学工業(徳島県阿南市)の社長だとて「なんでそんなワケのわからん研究を続けるのか」と、ハナから馬鹿にしていたかもわからない。劣悪な町工場の研究室で必死に取り組む中村修二氏は、いわば研究の虫で変わり者、の烙印を押されていたことだろう。
 経営の苦しい中でそんなヒマ仕事をする中村氏の姿は、社員始め関係者も軽視して問題にしなかった。だから僅か二万円の報奨金でカタをつけていたわけだ。このあたりで百万円のお金を出すくらいの度量が社長にあれば、中村氏の神経を逆撫ですることも無かったはずだ。
 ところが今回の裁判で二百億円という判決が出て、日亜側は周章狼狽腰を抜かすほどびっくり仰天した。
 「会社で仕事をしたものは会社のもの。なんでそんなお金を払わなければならんのや」
 と口惜しがった。
 大きな発明、発見には、多くのこんなエピソードが聞かれるが、今回の場合は一寸違う形だと思った。
 要はその創業期に貢献した研究人財に対し軽い処置しかせず、ご本人の意欲を喪失させたことが失敗だった。それだけの頭脳を評価するにしても、低レベルのトップでは頭から使用人としか認めない扱いだった。
 このことは今後大小を問わず企業内における研究成果の判定に、一つのヒントを与えた形となった。
 ところで香川県内でも香川大学工学部の学生ベンチャーを始めとして、俄にブームが巻き起こってきた。
その先頭に立つのは、やはりいま大ブレイク中の香川大学工学部長石川浩氏とそのグループであろうか。
 東大、北大に次いで全国第三位ともいうべき3つの寄附講座を擁し、この世界ではホットに注目される存在になってきた。
 企業も同様であるが、やはりトップのベンチャーにかける熱い想いがなければ、内部に雰囲気、向上心は熟成されないのである。
 ただ、大学内部だけでは財政的な裏付けが弱いためどうしても有力企業の支援を取り付けねばならない。
 外部の会合へも積極的に顔を出して企業トップとの交流による接点は、次々と具体化して強力な援軍となった。いわく香川證券、穴吹工務店、四国機器などから寄附講座の申し出があり、地域における産学官連携の中心的役割を担っている。
 これすべて精力的に先頭に立って取り組む石川学部長の果たす役割に他ならない。経済界有力企業トップとの交流とベンチャービジネスに賭けるすさまじい情熱、柔軟な社交力、人間性、向上心のなせる業であろう。
 大学発ベンチャーで企業化も進んでいるが、研究開発に止まらず経営能力のある人財も確保して、採算のとれる内容を目指して欲しい。
 早い段階から株式公開への狼煙をあげるのは早計にすぎ、まずしっかりと足元を固めることに専念するべきであろう。

ベンチャー不退転の心を

 このところ香川県下の起業家熱もホットな勢いになっているが、研究開発された製品がいかにすばらしい優れたものであっても、それが即市場で高く評価されユーザーに受け入れられるとは限りらない。
 特に大学の教授らは、良く言えばゴーイングマイウェイ、きつい表現をすれば唯我独尊で他人の助言などには一切耳を貸さない傾向がある。
 ダイオードで一躍脚光を浴びた中村氏も、一つ間違えばひとりよがりの自己満足型研究となり、田舎でそのまま埋もれていたかも知れない。
 ある大学発ベンチャーを立ち上げた某大学の教授は、販売戦略に失敗して在庫の山を築き「もう二度とベンチャーはやりたくない」と、天を仰いでため息をついたという。
 そのくらい現実は厳しいということを、実感しているかどうか。
 温室育ちの大学教授や学生諸君がどこまで、社会の荒波と批判に耐えて一つの企業化を成立させることができるかどうか。このあたりが一つの勝負ところでもある。ねばり強い抵抗力が必要であり、試行錯誤を繰り返しながらも、不退転の心を持ち続けることが大切な要素でもある。
 ベンチャービジネスは文字通り大いなる冒険の旅なのだ。
 ある大学教授がいみじくも「学生の企業インターンも結構なことだが、教授陣のインターンをやる方が先決ではないのか」と言っていた。その中で大化けの可能性が高いのは希少糖ビジネスであろうが、あくまでも慎重な行動を望みたい。
 香大工学部には全体的にベンチャーの気風が巻き起こり、志を持つ学生や教授が少しづつ増えてきたことは好ましい現象といえよう。願わくばこの中からダイオードに次ぐ二番手のヒットメーカーが育って欲しいものである。香川にはその土壌が順調に育ちつつある。(編集長 中西 稔)

   
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