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【帝國製薬(株)】 代表取締役社長 藤岡実佐子氏

谷益美さん

家業を承継した期待の女性トップ、東京で香川の魅力発信にも尽力

「先で家業を継承することもあるのかな」平成元年に入社する際、頭の片隅にこんな漠然とした思いはあったと述懐する。

平成14年3月から社長を務めた元日銀 村山昇作氏の後任として、昨年3月現職に就いた。村山体制の9年間は自らも代表取締役として、父である赤澤庄三社主と三人で経営全般をみてきた。その十分な助走期間から、スムーズな社長業スタートとなった。

 「創業家出身でない村山氏が社長を務めたおかげで、客観的な見識を持てたことは非常に大きいですね」と功績をたたえる。
 いまは東京事務所を拠点に、月の三分の一ほど本社で指揮を執り、香川・東かがわ市発『世界一のパップ剤メーカー』を次代へと導く。
 香川への愛着の念は強く、「一昨年の瀬戸内国際芸術祭は非常に感動して何度も会場を訪ねたし、知人にPRもしました。社長に就いて東京と香川を往来する機会が増えたので、微力ながら東京で『うどん県』の発信に努めたいですね」と話す。
 平成11年代表取締役に就いてからは経営企画、コンプライアンス規程の策定などを手掛けた。
 「それほどの大企業でないことが幸いして、隅から隅まで情報が伝わりやすく、即断即決というスピード経営が当社の強み。一方、昨年の東日本大震災でリスク分散も課題となりました。商品の安定供給に向けた、各工場のバックアップ体制も整えていきたい」と抱負を語る。
 世界情勢の変化で円高が進んだことも、海外売上の比率が半数を占める同社にとって深刻な問題。
 人口の多い中国やインドでの海外戦略については、「今の貼り薬自体の市場は小さくても、経済発展の著しい国ですから大変魅力的。しかし貼り薬は原価が高く、商品価格も高くなるため、ある程度の富裕層を狙った展開になってしまいます。販売力のあるパートナー選定も重要になりますし、まずは課題をクリアしたい」
 市場調査で情報を集め、慎重に海外展開を進めていく考えを示した。
 会った印象はとにかく柔らかい。同じ目線で接する姿は、中堅社員にとっては「姉」、若い社員には「母」のような温かい存在に違いない。
 趣味はスポーツ観戦とダイビング。チーム発足の経緯に感動を覚えたという、横浜FCの熱狂的サポーター。家庭に戻ると子息はこの春社会人一年生で、母としてはホッと一息。東京大学法学部卒。56歳。


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