百十四銀行（高松市亀井町5-1）は、４月１日付で綾田裕次郎代表取締役専務執行役員が頭取に昇格する人事を発表した。トップ交代は８年ぶり。
　コンプライアンスの強化や組織改革、また女性活躍の推進や、地方創生にも力強いタクトを振った渡邊智樹頭取は代表取締役会長に就く。
　４月から始まる新しい中期経営計画に加え、渡邊頭取がレールを敷いてきた「四国アライアンス」が本格稼動するタイミングでの交代劇となった。
　マイナス金利や人口減少、少子･高齢化の進展など地域金融機関を取り巻く環境が厳しさを増すなか、地方創生の実現に向けて果たすべき役割は大きくなっている。また一方ではＦｉｎＴｅｃｈの台頭など、競争環境の変化に応じた柔軟かつスピーディな対応ができる若い力が強く求められており、このあたりが交代の背景にあったものとみられる。

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　綾田氏は高松市出身の57歳。慶應義塾大学を卒業後昭和57年入行。栗林支店長、名古屋支店長、営業統括部長、執行役員東京支店長などを経て平成27年より取締役常務執行役員。昨年からは現職を務めていた。
　会見で綾田氏は「いま地域金融機関に求められている資質は〝変化への対応力〟」として、常に現場に足を運び時代の変化に対応していくことを強調。「厳しい時代ではあるが、この逆境を変革のチャンスと捉え、引き継いだ襷の順位を少しでも上げて次に繋げたい」と力を込めた。
　さらに「地域が抱える様々な課題に対して、金融の枠にとらわれることなく解決のお手伝いをすることで、地域経済や住民の方々の生活に貢献していきたい」と、渡邊イズムを更に浸透させつつ、地域にとってなくてはならない金融機関としてより高みを目指していく決意を披瀝した。
　会長に就く渡邊頭取は、不正融資問題による業務改善命令を受けた平成21年に頭取に就任。厳しい環境の中での陣頭指揮が続いたが、とりわけ地方創生には殊の外情熱を注いだ。「地域活性化室」の設置などで地銀としての存在感を高めてきただけでなく、四国創生に向け阿波銀、伊予銀、四国銀とタッグを組む「四国アライアンス」の本格稼働に向けても尽力してきた功績はきわめて大きい。
　会見に同席した渡邊頭取も｢綾田専務は卓越した見識と力強いリーダーシップがある｣と評したうえで、「この上ない最適な人に襷を繋ぐことができ、たいへん心強い」と大きな期待を寄せていた。

高い見識と温厚な人柄、リーダーシップに高い評価

　綾田氏をよく知る元行員は「高い見識と群を抜くリーダーシップがありながら、温厚、気さくなタイプで周囲への気配りができ、部下の面倒見も非常に良い方。偉ぶらず庶民的で、変革が求められる金融機関の新しい若きリーダーとして最も相応しい」と、綾田氏のトップ内定を「銀行の飛躍に繋がる大きなチャンス」と歓迎する。
　綾田氏は祖父・整治氏、父・修作氏も同行で頭取を務めており、一部には世襲という表現を用いる向きもあるが、やはりその高い実力と懐の深い人間性を評価する声がほとんどだ。
　別の元行員も「綾田氏の悪い噂を聞いたことは一度もない。とにかく部下を大切にする方で、仕事終わりに気取らない店で〝軽く一杯〟という姿をよく見かけた。大勢で盛り上がるのが好きで、部署で成果を上げた時などは自ら音頭を取って部下らの労をねぎらうこともよくあった。家柄の良い方というのは周知の事実であるが、それを感じさせない親近感があり、銀行にも新しい風が吹くのではないか」と期待の声も大きい。
　穏やかかつ実直なイメージもあって、近年では竹崎克彦元頭取、渡邊頭取に比べれば柔和な印象が先行するものの、高い見識と温厚な人柄、リーダーシップは歴代頭取に勝るとも劣らないものがあり、清廉なキャラクターと相俟って百十四銀行の新時代の舵取りに最も相応しい頭取誕生に地域の期待は大きい。

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